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地域インスティテューション&リーガルフォーラム
第1回地域インスティテューション&リーガルフォーラム(終了)
令和5年3月4日(土)に、ハイブリッド形式で、第1回地域インスティテューション&リーガルフォーラムが開催されました。
当日は、本学会理事長の原田保より、「開催趣旨」として、分野別の専門的な視座と総合的な視座を複合化する「専門化×総合化」、理論と実践との往復を通じてより地域デザインモデルの完成度を高める「理論×実践」、そして法令を主体とした制度の固定的な視座と制度の羈束性を除却した自由な視座を組み合わせる柔軟な発想を基軸に据えた「制度×自由」の3つの視点から研究を進める必要性が示されました。
次に本フォーラムの事務局長兼プロデューサーである、株式会社産学共同システム研究所の吉田賢一主席研究員が、「論点提起」として、新たに立ち上がった本フォーラムにつき、前提となる地域デザインと呼ばれる概念を取り上げ、次の4つの視座の紹介から解説を始めました。
- まちづくりを工学的に考究する都市計画・都市開発を学問的基礎とする都市工学系
- 経営学・組織論・政策学・社会学の観点から地域活性化にアプローチする地域経営・公共政策系
- 公共政策の一分野であるが、地域の歴史や文化的知見の集積である博文館のマネジメントや、それを担うキュレーターの育成を企図する博物館学系
- 地域における食資源の活用等に、実践的に取り組む農業経済系や栄養学系
これまでの学会における知的営為の結晶であるであるZTCAデザインモデルやISETデザインモデルなどのスキームは、これら4つの視座を内包しつつ、地域(zone)の動態を捉えフィルムに焼き付けたネガの機能を果たし、その応用可能性は極めて高いといえます。
一方で、地域の動態を実定法によって枠組みを与え、その効果を横展開させていくための視座がなければ、動態を捉えても、それを客観化・評価し、さらに深化させることができないのではないかとの問題意識があります。
そこで、法制度論の視座を包摂することにより、「地域デザイン学」の立体的な構造が組み上がり、理論から実証、さらに改善による持続的発展のメカニズムを彫琢することの意義は極めて大きいといえます。
次に「研究報告」として、「これからの福祉制度と地域デザイン」について、大和大学政治経済学部教授の倉橋弘から、社会福祉法の規定を基に重層的支援体制整備事業の概要について解説があり、それらを多様な地域に落とし込む際に生じる齟齬や、それらの解決に向けての取り組みにおける地域デザインの手法が持つ可能性について問題提起がなされました。
そして「パネル・ディスカッション」では、共通テーマとして「地域デザインモデルにおける法制度の可能性」を掲げ、参加者も交えて多角的な議論を行いました。
大きく2つの論点が示されました。1つ目は地域で実践的な課題解決を図るための、適切なアクターを募る、特定の拠点を持った組織づくりが必要であり、その例として大学やそれらの地域コンソーシアム団体の存在が示された。
2つ目は人材育成であり、制度を扱う領域に適切に問題状態を入力し、解決に導けるノウハウや知見を学ぶプログラム整備の必要性と、それらを活用した実践的な人材育成のあり方について肯定的な意見が提示されました。
最後に本フォーラムのプロデューサーである吉田より、「全体総括・閉会挨拶」において、学会関係者や参加者のご協力により第1回地域インスティテューション&リーガルフォーラムを大過なく全プログラムを終了することができた旨が表されました。
そして最後には、本フォーラム中心に、を地方自治法、行政法、都市計画関連法、環境基本法、各地方自治体条例などの実定法からのアプローチを基本とする5つ目の法制度論視座を確立するべく本フォーラムをさらに活発化させ、学会内の多様な知見を結集し、地域デザイン手法の実践性を高めることが標榜されました。
より実勢的な課題解決と学会の研究活動の相互連関性を高めていくことを基本に、さらに研究と実践の活動範囲の拡充を企図していくことを提起し、フォーラムは閉会しました。