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理事長挨拶

理事長挨拶

全国大会は,研究者にとって日頃の研究を確認する場であり,学会にとっては今後の活動を探索する場である。それは,本学会が研究のための組織であり,研究を指向する会員のための組織であるからである。本学会では,これらへの取り組みは啓発的なものではなく,主に地域価値の発現に向けたデザインが指向されるものとなる。

本学会では,学会の欠点である時間や約束を守らないことが研究者であるというような傲慢さを忌避するために,時間や約束事を守ることに留意している。また,学会はビジネスの場ではないことの確認の意味で,登壇者に対して報酬を支払うことはしていない。それは,報告は自身のためだけに行われるものではなく,学会の発展のために行われるものであるからであり,当然ながら報告を習慣にするような対応は考えられてはいない。

それゆえ,全国大会での報告が学会誌に研究論文として掲載できる高質な研究へとつながることが期待されている。つまり,本学会ではすべての研究行為が研究論文執筆に結び付くことが求められており,単なる事例紹介に関する議論に終始することなく,理論の構築に向けた厳しい議論が行われることが大事である。そのため,このようなことが期待できない報告についてはセレクションによって質の保証を図っている。これは苦しい選択であるが,後発で弱小の組織にとっては避けて通れない対応である。

我々は,今や社会課題である地域デザインに取り組むのであり,啓発活動を行う組織ではない。我々の目的は地域価値発現のため実践組織ではなく,実践者のために有効な理論を提供することである。もちろん,実践活動を否定はしないが,大事なことはそれが理論構築に役立つことなのである。その意味では,本学会は理論構築に関心のない人にとってはさほど魅力的な組織にはなっていないかもしれない。そのため,啓発主義者においては,そのような行動が期待される組織での活動をお勧めしたい。

こう考えるのは,今や個人の勘や経験のみで地域をなんとかできるような時代ではないことは自明だからである。本大会では,実践者にも有益な理論構築に向けた議論が期待されることになるが,そのためには座長や討論者の質疑の有り様が問われることになる。ぜひご協力をお願いしたい。

また,研究発表では,事例研究のために構想された本学会の公式モデルであるZTCAデザインモデルに何らかの言及が行われる報告も期待されている。本学会で展開される社会課題への対応も,地域価値発現のための手段であるという考え方をとっており,これらが啓発主義者とは大きく異なる性格になっている。社会との関係は理論を通して行うことが求められていることから,理論研究に関心のある研究者の参集を大いに期待している。

コロナ禍での大会開催もすでに3回目の開催になるが,本年もまた対面およびオンライン形式(ハイブリッド形式)での開催をさせていただく。なお,会場の確保においては,今年度も本学会会員である(株)博展の鈴木紳介氏にお力添えをいただいた。心より感謝申し上げる次第である。

 

2022年7月吉日

本学会理事長 原田 保

 

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